奇跡だ!震災に襲われる前、岩手県に修理に出していた腕時計が戻ってきた。祖父と父が愛用した60年前のもので、もう動くことはないと思っていたが、縁あって遠くかの地の親切な時計店に預かられたのだった。同封の店主の手紙の日付は震災当日の3月11日。その日災害に襲われる直前に出してくれたようだ。そして、よくもあの惨状のなかを佐川急便が運んでくれたことだ。ねじを巻くと針が動き出した。人の温もりが伝わってくる。今は大変な苦しい状況におかれているけれど、必ずまたあきらめずに前に動き出す。そんな気持ちで小さな針が円を描くのを眺めている。